大学概要【2023年度実施分】実践的な取り組みをするゲストスピーカーの講義?特論への招聘
理工学部
講義?特論の中で特に実践的内容を扱う回について、その内容に関する一線級の実務家をゲストスピーカーとして招聘し、講義の流れに沿った「実践的取り組み事例や立場」に関する情報提供を行ってもらうと共に、担当教員との総合的討論を行う。
対象科目は、建築学科の学部2~3年生の講義科目、または博士前期課程1年生の特論科目(非履修生や2年生にも声をかける)などで、常勤教員が担当する科目とする。
ACTIVITY
[建築史概論]金柄鎭氏による特別講義
2023/12/24
特別講師 金柄鎭氏(早稲田大学理工学術院総合研究所 次席研究員)
開催日時 2023年12月12日(火) 2限(10:50–12:20)
場 所 共通講義棟南202
理工学部建築学科の科目「建築史概論」の一環として、文化財建造物の修理技術者として働かれた経験を持ち、韓国建築?日本建築?文化財保存の専門家である金柄鎭氏を招き、『文化財修理現場から見た保存方法と基準』と題し講義をしていただいた。講義には、同科目の履修者の他、受講希望学生も参加した。
金氏は、現在、韓国の伝統的な建築の設計方法の解明に取り組む研究者であると共に、日韓両方の文化財建造物修理工事現場で働いた経験を持ち、古建築の保存の基準や価値評価について確かな眼を持っている。今回の講義では、金氏の保存修理工事現場での経験をもとに、保存方法の策定までの段階について、日韓双方の具体的な事例の紹介を中心に、豊富な写真?資料に基づいてお話し頂いた。
はじめ、日韓両国の文化財の制度や修理工事の方針、進め方など概略の話があり、次いで、具体的な現場について、金氏の撮影した写真や図面を使いながら、各建物の概要、修理の方針、携わった仕事の内容を解説頂いた。1回の講義の中で、日本と韓国それぞれの修理工事現場の様子を説明し、また、それぞれの現場で考えたこと、難しかったことも実感を持って話して頂いた。1年生にとっては少々専門的で高度な内容も含むものであったが、多くの写真と丁寧な説明は理解の助けとなったと思う。また、建築の仕事が多岐にわたることを改めて知ることが出来たのではないだろうか。おなじ木造の文化財建造物の修理であっても、保存の制度や事業の進め方によって違いがあること、一方で文化財を守っていこうとする姿勢やその意義は国の違いを越えて共通していることが分かり、講義の意図通り、建築への視座と国際的な理解を広げられる満足度の高い内容であった。
(建築学科 米澤貴紀)
「建築主とデベロッパー」の具体例として分散型ホテルの経営者が特別講義!
2023/12/26
岡田岳史氏(みのまちや(株)代表取締役、(株)つぎと取締役)
建築学科の3年生科目「建築計画III」の第15回に(7/26)に、『古民家活用市場の今』と題し岡田岳史氏を招き講義をしていただいた。
みのまちや(株)とは、岐阜県美濃市の重伝建地区に位置する分散型ホテル「NIPPONIA美濃商家町」やシェアオフィスを経営し、今後更にまちづくり機能の拡大を目指している企業である。また岡田氏は(株)つぎとの立場から、全国で歴史的資源を活用した観光まちづくりを実践している。
特別講義は3部構成であった。
第1部は、古民家を取り巻く情勢、および古民家リノベが進まない理由である。特に後者について、信用、タイミング、リスクが解説された。
第2部は、「田舎で古民家を活用し持続させるには」であり、「NIPPONIA美濃商家町」を事例に、「工事費の圧縮」と「触らない改修」、「低リスク資金調達」と「地域の力」、「固定費の圧縮」と「地域雇用」、および「認知の壁」と「パブリシティ戦略」の4点が熱く語られた。
第3部は、岡田氏自身の育ち方であった。早稲田大学大学院(都市計画)で地方の景観整備事業等に関わる官学主導のまちづくりに携わったのち、大手リゾート開発?運営企業に興味を持ち入社。北海道のリゾートプロジェクト再生に携わり、その後古民家活用市場に参画したというキャリアが紹介され、学生目線から熱いメッセージも語られた。
事業スキームの話など、2年生後期の学生にとっていささかハードルの高い内容であったが、将来デベロッパーを目指す学生が少なくない当学科にとって、食い入るように聞き入る学生も多く見られたのが印象的であった。
(建築学科 教員 高井宏之)
住宅防犯のここがポイント-将来設計者を目指す学生たちへのレクチャーと実演
2023/12/26
北瀬智之警部(愛知県警察本部 生活安全総務課)
建築学科の2年生科目「建築計画II」の第13回に(12/19)に北瀬警部を招き、『住宅防犯-愛知県の犯罪発生の状況と住宅設計』と題し講義をしていただいた。目的は、将来設計者を目指す学生たちに、住宅防犯の基本的な作法を、実感を持って理解して欲しいとの思いからである。
特別講義は2部構成であった。
<第1部>は愛知県警の組織と住宅防犯対策についての解説である。ご自身の警察に就職した思いなど学生目線の解説もあった。
<第2部>は愛知県の住宅侵入盗の動向、実際空き巣に入る様子の動画などをもとにした犯人の手口、犯罪防止の4原則(時間?光?音?目)が紹介され、防犯環境設計の4要素(監視性の確保、領域性の確保、接近の制御、対象物の強化)も解説された。
講義前の履修生へのアンケートで、自分自身?親戚?近所で空巣に入られたことがあるかを尋ねたら15%であった。このような状況の中、将来に就く仕事では住宅防犯に関する知識が常識であることが説明された。
(建築学科 教員 高井宏之)