大学概要【2023年度実施分】寒冷地建築物の住環境改善と地域特徴の顕在化

理工学部

寒冷地建築物の住環境改善と地域特徴の顕在化
実施責任者:佐藤 布武

本プロジェクトでは、寒冷地特有の景観の美しさや効果などをリサーチによって取りまとめること、寒冷地の住環境改善手法を探究することを目的としている。
寒冷地特有の景観の美しさや暮らしの知見を収集するとともに、寒冷地ならではの課題を解決するデザインの探究を行う。具体的には、住民参加型WSの開催や、住宅の改修デザインなどを行う。

ACTIVITY

稲藁を使った断熱壁のセルフビルド

2024/01/06

 雪に埋もれてしまう豪雪地域では、冬場に屋外で作業することが難しいため、必然的に大きな家が建てられています。しかし、壁だけで囲われた家は、冬になったら、もちろん寒い…。特に、昭和の頃に建てられた建物は、断熱もあまりされていないため、寒い家の中で灯油をガンガン焚く、という選択がなされています。
 そこで大事になるのが、断熱。しかし、断熱材は厚ければ厚いほど高額になってしまいます…。雪が積もる寒い地域の大きな家では、分厚い断熱材を敷く必要があり、結果として、ものすごい金額になってしまう。だから、なかなか断熱も難しい。
 では、断熱材を買わない選択肢はできないのか?自分たちで作れたどうか?
 そこで我々は、日本ならではの断熱方法として、「稲藁」に着目しました。そもそも、蔵や倉庫の屋根にも使われていた稲藁。ストローベイルでは麦藁が使われます。建物のまわりにぐるっと稲藁を敷き込めば、断熱できるのではないか?既往研究を見ると、確かにその効果が示唆されています。
 敷地の大きい地方では、外壁の外側に稲藁層を作っても全く問題ありません。そこで、家の外側に「覆屋」と名付けた外断熱帯を作り、間取り上難しい場所は室内に籾殻を敷き込むことにしました。
 まずは、学生と一緒に、角材にホゾを掘り、それを組み立てていきます。柱に溝を切っておき、壁は板を上から落とし込んでいく構法にしました(写真1)。これにより、稲藁を交換できます。
 また、屋内でも作業ができるように、土間空間も作りました(写真2)。

写真1:制作した覆屋

写真2:土間制作の様子

断熱壁のための稲藁採集

2024/01/06

 稲藁の「覆屋」により、断熱材をセルフビルドする実験住宅。美しい棚田の広がる(写真1)十日町市松代地区蓬平集落に立地しています。
 そもそも、日本は、稲作資源に恵まれた国です。日本各地で稲作が営まれ、美味しいお米を食してきました。同時に、稲藁も大切に使われてきました。写真は、十日町市の伝統的な稲藁利用です(写真2)。これ以外にも、家畜を飼っていたときは、家畜の敷き草として活用され、堆肥として土に還されていました。
 しかし、産業構造の変化によりこのような利用はなくなり、結果として、稲藁は使われなくなっています。使われていたが放置されている資源の、新たな可能性について検討しているのが本プロジェクトです。
 そこで、建物が立地する集落の棚田農家さんにお願いし、稲藁を分けていただきました(写真3)。軽トラックいっぱいに運び出し、家の前で天日乾燥(写真4)をしました。その後、先に準備しておいた室内土間に移し、1週間ほど乾燥させました。
 次はいよいよ、稲藁の敷き込み作業です!!

写真1:蓬平集落の棚田

写真2:伝統的な稲藁利用

写真3:採取した稲藁

写真4:乾燥の様子

稲藁を使った断熱壁の敷き込みと温熱調査

2024/01/06

 稲藁の断熱材を作成する実験住宅プロジェクト。
 農家さんから譲り受けた稲藁を、事前に制作しておいた覆屋にどんどん入れ込んでいきます(写真1、2)。よく乾燥させた稲藁はふわふわなので、それを上からギュッギュっと押し込んでいき、密度を上げていきます。藁を入れたら落とし板を落としていく、という順序で、どんどん上へ上へと積み上げていきました。
 さて、いよいよ冬シーズン。豪雪地帯の十日町市は、写真のように雪で覆われます(写真3)。なんと、2階近くまで積雪されるそうです。この豪雪地域の中で、稲藁断熱が機能するかどうかを確認するため、内外の壁面表面温度の調査を行いました。調査の結果は、春先、雪が溶ける3月に確認することになります。

写真1:稲藁を乾燥させつつ敷き込む様子

写真2:敷き込み落とし板が入った状態

写真3:積雪の様子

写真4:データロガー

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