大学概要【2021年度実施分】寒冷地建築物の住環境改善と地域特徴の顕在化
理工学部
本取組では、寒冷地特有の景観の美しさや効果などをリサーチによって取りまとめること、寒冷地の住環境改善手法を探究することを目的としている。新潟県十日町市は美しい棚田が広がる地域である。この地域の空き家をコミュニティ施設へと改修するプロジェクトを実施する。寒冷地建造物の特徴を鑑み、年間を通した利用が可能となるよう、施設を計画する。山形県飯豊町では、美しい景観の未来を住民とともに考える取り組みを行う。
ACTIVITY
新潟県十日町市での空き家再生計画
2021/12/27
本プロジェクトでは寒冷地の住環境改善手法を建築デザインの視点から試みています。
新潟県十日町市は豪雪地帯で、屋根の雪を下ろすのも大変な地域です。その中の一つの空き家を「交流拠点」として再生するプロジェクト。
昨年度地域連携者へのプレゼンを行ない、今年度より実際に部分的な改修を始めていく予定でした。しかしながら、このプロジェクトはコロナの影響で、当初予定を大きく変更しながら進めざるを得ない状況となっています。
たくさんの地域の方と意見交換をしながら設計の精度を高め、時間をとってゆっくりと施工を進める予定だったのですが、2020年3月から2020年9月まで、幾度となく訪問を検討するも、なかなか実現しませんでした。それでもできることを進めようと、学生と提案を作成していました。
そんな中、コロナの感染状況が9月より急激に改善され、10月には実作業をできることに。
急ぎ、メンバー間で、短い日程でできることを検討しました。
これから雪に閉ざされた長い冬が来る十日町市。
その前に、暖かく過ごせる断熱された空間を設えることを目標に、断熱改修を計画した。大きな住宅の1/3程度を冬の部屋として、天井と床下に断熱材を敷き込む計画を作成しています。
施工に必要な材料の発注も学生が行いました。
デザインを検討して図面を作り、必要な材積を割り出し、見積もりをとり、発注します。
実際の建物を相手にする検討は、普段の課題の机上の空論とは異なり、実に多くの学びがある時間となりました。
新潟県十日町市での空き家再生計画?施工編
2021/12/27
前回に引き続き、今回は施工編!
まずは既存の床を剥がす作業を行います。
すると格子状に組まれた下地板が出てきます。
今回の断熱改修では、この下に断熱材を敷き込むための下地を新しく作り、断熱材を敷き込みました。環境への影響と施工精度に配慮して羊毛断熱材を採用しました。
その上に下地板をはり、仕上げの材料を打ち付けていきます。1階は、構造用合板を正方形にカットして正方形タイルを作りそれを塗装することで低価格で仕上がりを綺麗にするアイデア施工をしています。
2階も同様です。まずは下地となる格子を作り、そこに断熱材を敷き込みます。2階は生活空間なので、リッチに、無垢板のフローリングにしました。優しい足触りです。
作業の後には交流会も。きちんと距離をとって現地協力者のお話をゆっくり聞きました。こういう、学内ではなかなか会えない方と話し、考えることは、何よりの学びの時間です。
新潟県十日町市での空き家再生計画 次年度にむけた改修計画
2021/12/27
学生と検討中のミーティング資料
まずは冬を越すための改修を進めてきた新潟の空き家改修。
次年度にむけた計画を練っています。
コンセプトに掲げているのが、「ロケットストーブ」、「メイソンリーヒーター」。
暖房装置のDIYができないか、そしてそれが建築全体を包み込むものにできないのか、という検討をしています。
韓国の伝統的な手法「オンドル」もまさにそういったものです。
歴史に学び、新しいものを生み出す。
もし、暖房装置がハンドワークで作れると、それはきっと消費社会との新しい距離を生み出すことになるのではないでしょうか。
壮大な未来に期待しつつ、まずは地道に事例調査を始めました。
山形県飯豊町の散居集落の継承プロジェクト
2021/12/27
本事業では、山形県飯豊町の散居集落調査も実施しています。
豪雪地域の山形県飯豊町では、吹雪が住宅内に舞い込まないように、カヤを住宅周りに設置する「カザライ」という伝統景観が存在しています。
このような景観を継承するために、住民参加型ワークショップを実施する予定でしたが、人が集まることが難しい昨今。なかなか進捗しませんでした。
しかし、どうにか、次年度よりプロジェクトを再開できる段取りができました。
次年度は、景観ワークショップ、カヤの再生ワークショップ、屋敷林の環境調節効果検証ワークショップなどを実施する予定です。
その一連のプロジェクトのキックオフとして、年度末に、飯豊町現地にて、飯豊町に関する修士論文発表会を実施する予定です。