大学概要【2016年度実施分】大工との協働による建築実践を通した体験型ものづくり教育
理工学部
実際の建築現場での作業への参加を通じて、学生が建築の構造やデザインの背景を学ぶとともに、ものづくりの楽しさや厳しさ?社会的意義などを体験的に考える機会を提供する教育プログラムの試行を行います。具体的には、既存建築の改修や子供の遊具施設といった、社会的要請に応える実際の建築プロジェクトを設定し、学生たちが設計段階から部材の加工、現場での建設作業まで継続的に(数ヶ月にわたり)参加しながら学びます。
?柳沢研究室FACEBOOKページ:豊田のさくら村でのツリーハウス建設、住宅のリノベーション現場での様子などを随時発信しています。
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ACTIVITY
◆左官ワークショップ
2017/01/25
名古屋市内の住宅改修現場にて、工作舎中村建築の中村棟梁の指導のもと、2日間にわたって土壁塗りと天井塗りの左官ワークショップを実施しました。研究室の学生だけでなく、OBや近所の子供たちも参加し、約40名でにぎやかに行いました。
作業の数日前には、豊田の前田興業さんで材料となる泥コンの製造過程を見学した後、材料の練り混ぜを行いました。まずは土をふるい粘土と分け、切った藁と水をミキサーを使って混ぜ合わせました。
ワークショップ当日は参加者たちが手分けをして、住宅の外壁や内壁の一部に土壁を、天井の一部に土と漆喰を混ぜたハンダと呼ばれる材料を塗りました。慣れないコテを使い、何度も土を落っことしながら1時間ほど悪戦苦闘すると、作業の姿も様になってきます。壁には3cmもの土を厚くつけました。天井塗りは首や肩に負担のかかる難しい作業ですが、頑張って2日がかりで塗りあげました。作業だけでなく、事前の準備?段取り、終了後の片付けや道具の洗浄などが大切であることも学びました。
土をふるう作業は神経をつかい、練るのには筋力をつかい、雨にも打たれ、首や肩が痛くなりましたが、建築の施工や材料についての学びが深まったのはもちろん、単純に楽しかったですし、土を作ることから体験できるのは一生に数回もできない体験でした。(参加学生)
◆三和土ワークショップ(11月)
2017/01/25
名古屋市内の住宅改修現場にて、工作舎中村建築の中村棟梁の指導のもと、2日間にわたって三和土(三和土)による土間施工のワークショップを実施しました。研究室の学生ら約30名が参加しました。
まず土と石灰、ニガリ、砂をミキサーで混ぜて、三和土の材料をつくりました。サバ土は花崗岩が風化したもの、花崗岩の主成分は長石?石英?雲母であること、炭酸Ca(石灰石)から酸化Ca(生石灰)?水酸化Ca(消石灰)また炭酸Caへの変化など、中村さんの講義をききながら作業をします。並行して、敷居部分の土留めの金物を取付たり、周辺が汚れないようマスキング処理をします。慣れないマスカーを貼っていく作業に悪戦苦闘し、その作業だけで半日かかってしまいました。その後、三和土の材料をひろげ、自作の工具で土が固くなるまで叩きしめました。はじめは柔らかかった土も叩けば叩くほど固くなっていくのですが、なかなか表面が綺麗にならず、腕の筋肉の限界まで叩き続けます。途中からは、叩くリズムを合わせてゲームをするなど楽しみながら作業をしていました。
三和土という工法は、今ではほとんど一般の住宅で使われることがありませんが、難しい技術を使わずとも多く人が参加することで実現できるため、コミュニティづくりにも繋がる可能性のあると感じました。2日間にわたり、非常に貴重な体験をさせていただき、とても楽しかったです。(参加学生)
◆さくら村ツリーハウスの制作(4月?)
2017/01/26
愛知県豊田市の山の中で、建築家と大工の方々と一緒に、ほぼ月1回のペースでツリーハウスの制作にとりくんでいます。各回の制作ワークショップでは、柳沢研究室の学生だけでなく1?2年生の有志の学生を交え、ノコギリやノミなどを使いながら、少しずつ完成にむけて作業をすすめています。この取り組みの延長として地元の木こりの方にも協力していただき、立ち木の伐採から製材の体験、林業の現状の勉強もしてきました。製材も含め、今年度はこれまでに計10回(1回あたり1?2日間)の活動を行いました。大工の中村さん指導のもと、自分たちで製材した木材に罫書きをし、工具を使って木材の加工と組立を行い、建築家の安井さんが設計した図面にしたがいながら、部材を持ち上げ、山桜の大木の周囲に組み上げていきます。これらの制作過程を通じて、木材の供給からから製材?加工、設計、施工にいたる一連の流れを、実感をもって学んでいます。
◆4/10
この日は研究室から6名参加しました。中心の桜の木にツーリーハウスの床を支える梁を取り付け、それを支える方杖の固定を行いました。ツリーハウスに使用する木材は現場近くで取れるものを使用し、自然乾燥のものを使います。場合によっては伐採直後の丸太を使うこともあり、含水量の違いで持ち運びに難しさがあり、また滑車などの工夫一つで重い木材でも簡単に運べることを身を以て経験しました。その他の作業としてはノミやノコギリを使用し木材にほぞの加工を施し組み上げるなどもしました。
◆4/23.24
この2日間は研究室から計8名の参加し、その他に豊田高専から1名この活動を知った学生が参加しました。
23日は梁と方杖の1セットの取り付けと短い梁材から長い梁材への付け替え、柱と登り梁の加工をしました。規則正しいものではなく実際に生えている桜の木を相手にツリーハウスを作成するので、組み立てる前に加工したものが桜の木と固定する際にずれてしますことがあります。その度に現場加工しながら行う作業は実際にこういった現場作業を行っていないとわからないことで、この活動だから学べることだと思います。
24日は23日の作業の続きと加工を中心に行いました。梁と方杖だけではなく柱と登り梁を取り付け、ツリーハウスの形少しずつ見えてきたことで自ら図面を見て木材を加工したものが形になっていく喜びを感じました。
◆5/21.22
この2日間は研究室から8名が参加しました。大工の中村さんのもとで働く名城大学OBの星野さんも参加し、作業を手伝っていただきました。
21日は2年から1名参加してくれました。今までの作業で取り付けてきたフレーム重みや、現場施工で生じたツリーハウスのずれを実測し、修正していく作業を中心に木材の加工を行っていきました。風や振動で揺れる桜の木での実測は安定せず、通常に建築物に行う実測と同じようには行かず難航しました。
22日は柳沢先生とそのご家族も一緒に作業を行いました。21日に引き続き木材の加工と組み立てを中心に作業は進み、このころになると日照時間も延び、今までの工具に加え、チェーンソーや丸ノコといった電動工具も使用し始めたので作業の進行も大きくなりました。
◆6/15 ツリーハウス用木材の伐採
この日はツリーハウスで使う木材の伐採を行いました。ゼミ室から2名参加し、木こりの杉野さんの指導のもと星野さんにも手伝っていただき作業を行いました。
これまでツリーハウスで行ってきた土台作りでは、丸太を丸太のまま加工して使用してきました。土台ができあがり、角材を使用していく工程に入り、図面から必要な木材の数や寸法を拾い出す「木拾い」を行い、それを表にまとめたものをもとに今後使う材の伐採を行いました。伐採する木が立っている斜面、周りの樹木の位置など様々な観点からその木の倒す方を決めチェーンソーを入れていきます。しかし伐採とは一筋縄では行かず、チェーンソーの入れ方が正しくても木が内部で腐っていたり、隣の木の枝と引っかかったりして思いの寄らない方向に倒れ、常に危険と隣り合わせの作業であることを実感しました。
◆6/21 ツリーハウス用木材の製材
この日は15日に伐採した丸太をツリーハウスで使用するために製材しました。研究室からは1名が参加し、伐採同様、杉野さん指導のもと星野さんにも手伝っていただき作業を行いました。運び出した丸太を見ながら材の取り方を考え、製材機で一度あてを落としてから木口に罫書きをして挽いていきます。ひとつひとつの動きを、なぜそうするのかなど理由を教わりながら実際に手を動かし作業していきました。
立ち木の状態から伐採、製材をして、角材になっていく様で木造建築の原点を感じました。
◆6/25
この2日間は研究室から6名が参加しました。今回はツリーハウスづくりに興味をもった一年生も9名参加してくれました。柱を立てることを中心に作業を進めていきました。寸法通りに加工してもいざ組んでみると合わないことがよくあり、中村さんが組みながら修正をしていきました。大工の技術を目の前に単純な工具の扱い方とは別に学ぶことが多くありました。
◆11/11?13
今回はゼミ室から計7名が参加しました。
11日の作業は4年生が3名で作業に当たりました。製材所から木材を運び、木材の加工、組み立てを進めました。
12日からは3年生も加わり引き続き木材の加工、加工を中心に作業をしていきました。9つあるフレームも8割型桜の木に取り付けが完了してツリーハウスの全体像が見えてきました。久しぶりの作業で感じたことは含水率の違いで加工の難しさがあることです。しっかり乾いた木材だとノコギリの歯もスムーズに入り、小口も綺麗ですが、伐採した手で比較的含水率の高い木材だと木材とノコギリとの間の摩擦も増え、なかなか綺麗な小口にはなりませんでした。
◆12/10
この日の作業は研究室から6名参加し、2年生からも2名参加してくれました。
作業内容としては今回も木材の加工と組み上げですが、参加する学生の手つきも慣れてきて、次に何をすればいいか、こうした方がいいのではないかなど、自分たちで考えていくようになりました。フレームも完成が見え、安井さんや中村さん、企画者である安藤さんも交え、壁や屋根、仕上げの話もしました。そこで感じられたのはそれぞれの立場でのこだわりです。知識や技術をこれまでも学んできましたが、それ以外にものづくりへの思いも学びました。