大学概要【2016年度実施分】新規特殊講座「グローバル経済を考える」

経済学部

新規特殊講座「グローバル経済を考える」
実施責任者:佐土井 有里

グローバリゼーションが進み、経済活動にも国境がなくなりつつある現在、経済学の諸理論はもとより国際金融、環境経済、アジア経済など、学ぶべきことは多岐にわたる。経済学部では、経済の基礎となる理論とともに、経済活動の現実を知り、多様化かつ複雑化する社会において柔軟に対応できる人材の養成を目指している。
① 海外駐在体験者との協働 海外現地法人での海外駐在体験者やJICA国際協力事業駐在者等の外部講師による講義やディスカッションやグループディスカッションを組み合わせることにより、タイムリーな国際情勢、海外現地での経済活動の生の声を学生と共有する。海外経験者?教員?学生が共に考え、理論のみではなく、現実に海外で仕事をし、生活することの面白さ、重要性を学び、多面的な視野で世界を見る力を養う。
② フォローアップ海外実習 フォローアップ実習として、国際フィールドワーク科目と連携し、実際にその海外現地法人を訪問実習することも併せて検討する。

ACTIVITY

「ロシア経済の現状」(7/26更新)

2016/07/26

【ロシア経済?ビジネスの現状と日本企業の戦略】

■日 時:2016年7月21日(木)14:50~16:20
■講 師:Dr. Sergei Shaposhinikov モスクワ大学ビジネススクール Assosiate Professor

モスクワ大学ビジネススクール Assosiate Professor Dr. Sergei Shaposhinikov を迎え、経済学部公開講座「グローバル経済を考える(1)ロシア経済の現状」を開催しました。当日は、経済学部の学生、大学院生、教職員、120名が参加しました。

Sergei Shaposhinikov氏はロシアでPhD取得後、日本に10年以上滞在し広島大学で修士取得、その後、国連訓練調査研究所(UNITAR)、物流企業、コンサルタント会社での業務経験より、わかりやすくロシアと日本のビジネス関係についてお話しいただきました。英文資料をスクリーンに投影しながら講義は日本語で行われ、「ロシア(極東ロシア)は日本に一番近い国ですが遠い国という印象があります。そのうえ、日本ではマスコミが一定の情報しか流さないため、ロシア政治や経済制裁等のマイナスイメージが強いのかも知れません」という指摘から始まり、日本?ロシアの両方の学術?ビジネスを概観しつつ、ロシアに進出している日系企業の最近の動き、さらに急激なルーブル安?インフレ?市場の冷え込みにまで言及。

「2014年11月以降の原油価格急落を受けたルーブル安などにより物価が急上昇し、実質所得の下落が個人消費に悪影響をもたらしました。現在、在ロシア日系企業は約200社と少なく、うち製造業が20%です。日本?ロシア間の貿易をみると、日本からの輸出はほとんどが自動車関連で、ロシアからの輸入は石油、エネルギー関連が大半です。ロシアの輸出構造が依然として資源偏重になっています。ここ数年は経済の落ち込みやルーブルの大幅下落で事業環境は悪化しているものの、ロシアは投資環境の改善に取り組んでおり、ロシア人の教育レベルは高く、学問、芸術、スポーツ分野での多くのエリート層を育成しています。ことに若者の国際ビジネスへの関心は強く、文化的な違い(ビジネス慣習、遅いレスポンス、トップダウンが強い、高い女性の社会進出)もヒントとしてとらえ、ぜひ、名城大学の学生の皆さんに国際ビジネスにチャレンジしてほしい」と、知的?文化的な立場から国際社会に貢献できるようなグローバル人材を育成する名城大学の教育への期待を込めて、述べられました。学生が欧米やアジア以外の世界にも目を開くよい機会となって、受講生からも共感の声が伝わってきました。

「海外に出てグローバリゼーションを体感しよう―コングロマリット?多国籍企業とよばれる怪物企業をサーフィンしてみた体験を共有したい―」(9/28更新)

2016/09/28

■日 時:2016年9月23日
■講 師:リーンランド研究所 鈴木 雅文 氏

今回は、リーンランド研究所、鈴木雅文氏に「海外に出てグローバリゼーションを体感しよう―コングロマリット?多国籍企業とよばれる怪物企業をサーフィンしてみた体験を共有したい―」というテーマでお話しいただいた。

1980年~2010年までの約30年間の世界経済の大きな流れとともに自身が自動車産業に勤務していた際の体験談を伺うことができた。例えば、1980年代のプラザ合意(1985年)、日本の自動車産業の海外進出の始まり(1985年~1987年)、1990年代のバブル崩壊(1992年)、EU連合発足(1993年)、アジア通貨危機(1997年)2000年代の米国同時多発テロ(2001年)、リーマンショック(2008年)などに対し、自動車産業がどのような対応をしたのか、またそれらを通して自身がどのような体験をしたのかについてお話しいただいた。  

加えて、2000年代の在外勤務時の経験として、在外勤務をしていたからこそ客観的に日本や日本人をみることができ、日本という国や日本人に対してご自身が気づいた点や印象についてもお聞きすることができた。

講義の最後では、最近、気になることとして、ヨーロッパの移民、難民問題を事例として紹介し、世界各国の「グローバルな雰囲気」が縮小傾向にあること、言い換えれば、内向きになろうとしている点を指摘され、過去から現在にかけての動きを知ることは、将来の見通しを考える上で非常に重要になるとお話しいただいた。

また、講義終了後の質疑応答では、「自動車産業の今後の展望」や「日本における産業の空洞化」などについて、学生から多くの質問が出され、議論が交わされていた。

南米?モンゴル?ケニアJICA研修経験談(10/12更新)

2016/10/12

■実施日:2016年10月7日
■講 師:リロ?パナソニックエクセルインターナショナル株式会社 中嶋 修 氏

今回は、リロ?パナソニックエクセルインターナショナル株式会社、中嶋修氏に「異文化体験 欧州、中南米、アフリカ―ODAを通して見た開発途上国の人々―」というテーマでお話しいただいた。

これまでに中嶋氏が参加してこられたODAプロジェクトの取り組みの内容を中心に欧州、中南米、アフリカ駐在時の体験談を伺うことができた。講義でお話しいただいたODAプロジェクトの一部をあげると「パラグアイ品質?生産性センター強化プロジェクト」、「エルサルバドル貝類養殖技術向上?普及プロジェクト」、「ケニア産業人材育成プロジェクト」などである。それらのプロジェクトの内容やプロジェクトに参加した際に自身がどのような経験をしたのかについてお聞きすることができた。

講義の最後に、「外国と関わって仕事をする」にあたっては、外国の文化や環境が日本の文化や環境と違うというのは、当然のことなのであるから、その違いを受け入れ、違いを楽しみながら仕事をすることが重要になるとお話しいただいた。

講義終了後の質疑応答やディスカッションでは、「これまでに中嶋氏が参加してこられたODAプロジェクトの国ごとでの取り組み内容」や「取り組みの成果および国ごとに異なる課題解決のための方策」などについて、学生から多くの質問が出され、議論が交わされた。

特に、アフリカ、南米におけるJICA技術支援については学生の興味も高く、「技術支援」は日本のODAの特徴であり、「釣った魚を上げるのではなく、魚の釣り方を教える」という考え方に日本の海外協力の理念があると感じ、学生も強く共感していた。近年アフリカでは中国からのODAが急増しているが、中国は技術?資材?労働者まですべて中国本土から提供し現地に技術が残りにくいなど、アフリカにおける各国からのODAについての現状説明を受け、国によるODAの違い、良い点、悪い点について、議論した。