育て達人第125回 羽石 優子
育てスーパーグローバル高校生
SSHと高大連携の強み生かしたい
名城大学附属高校教育開発副部長 羽石 優子 教諭(社会、国際クラス担当)
文部科学省は2014年度から全国の高校56校を「スーパーグローバルハイスクール」(SGH)に指定し、名城大学附属高校が愛知県では県立旭丘高校とともに、中部地区私学では唯一指定を受けました。SSH(スーパーサイエンスハイスクール)とともに、附属高校の新たな顔SGH の中核となるのは普通科国際クラス。まとめ役の羽石優子教諭に聞きました。
国際クラス担当ということは語学が得意だったのですか。
得意ではありません。学生時代から他国の人々の暮らしをのぞくことが好きで、さまざまな国や地域に足を運んでいただけです。高校時代、出身地の姉妹都市交流で訪れたカナダで、ホームステイ先の人に「あなたはどう思うの」「日本人としてどう考えるの」とたくさん聞かれました。それまでの暮らしでは、自分や日本を客観視することにそれほど迫られなかったので、そこを問い詰められた時は新鮮な感じでした。世界を旅しながら国民性や文化のダイナミズムについて考え続けましたが、大学では比較文化ではなく社会学を学びました。同じ社会の中でも集団によって文化が違うことに注目したからです。
学生時代は海外体験のカリキュラムもありましたか。
語学系の授業で、提携先の海外の大学で、現地集合、現地解散で講義を受けるカリキュラムが組まれていました。ニュージーランドのクラストチャーチ市近郊の大学の講義室に、指定された日時に現地集合するわけです。飛行機やホテルも自分で手配しなければなりません。講義室にたどりつけなければ単位なしです。多くの学生たちには緊張感いっぱいの体験でしたが、振り返ってみると、その分だけの収穫も多かったと思います。
国際クラスでは、国際感覚を磨きたいという生徒たちが増えているわけですか。
増えています。入学して自分の英語力が鍛えられたことが自信となり、それがベースになって世界に飛び出したい、チャレンジしたいという気になるのでしょう。入学時の生徒たちの英語力は、TOIECの点数では平均で350程度ですが、3年生になると700を超します。一方で、1年生の時から、日本語や英語でのディスカッションやプレゼンテーションをどんどん経験していきます。2年生になると「多文化共生」という授業でミニフィールドワークも行い、3年生になると課題研究を実施しています。
生徒たちは英語力を鍛えようと相当勉強するわけですね。
生徒たちなりに苦労もすごくしています。今年の卒業式では私が担任した国際クラスの生徒が答辞を述べました。「英語など課題が多くて死ぬかと思った」「担任は鬼に見えた」とやられました。各教科から出される課題も、教員間で連絡を取っているので私からも生徒たちの尻をたたきます。「3時間しか寝ていない」という生徒に「5時間も寝たら目が腐るで」と。生徒たちにしたらまさに「鬼の担任」かも知れませんね。でも、他クラスの生徒たちから「国際クラスは英語がすごいんでしょう」と言われると、生徒たちは「私たちは英語クラスじゃない」と反発していました。英語だけを学んだのではない、グローバルな目で学んだのだという自負があるようです。今春は卒業生の25%が上智大、慶応大、立命館大など国際化にも重点を置く大学へ進学しました。
文科省へのSGH指定校申請では「高大協働による愛知県産業を基盤にしたグローバルビジネスの課題の探求」をテーマに掲げています。
愛知県の高校ですから、産業というベースを使わない手はないと思いました。ビジネスや産業そのものを研究するのではなく、そうした領域を使って、人間開発、共通の価値創造、集団で起きる葛藤、協働?共生の研究をめざします。アジア進出企業が、現地の人たちとともに満足できるウインウインの関係とか。申請では「ローカルとグローカルを往還する視座」という難しい表現になっていますが、地域、世界と立ち位置を自在に変えての視点も大切だと思っています。幸い名城大学には国際化推進センター、アジア研究センター、地域産業集積研究所もあり、高大連携の強みもぜひ生かしたいと思っています。
SGHで最も期待しているのはどんな点ですか。
新聞などで本校のSGH指定を知った卒業生たちから続々とお祝いのメールが届きました。よほど誇らしく思ったのでしょう。申請準備では附属高校が2006年から指定を受けているSSHで蓄えられたノウハウ、人的財産に助けられ、実践してきた先生方に高い意識で引っ張っていただきました。SSHは文系の生徒たちは対象にならない部分もありましたが、SGHは文系、理系関係なく関わることができます。助成金が得られることで生徒たちのチャンスが大きく広がります。国際化の取り組みが全校に広がり、学校全体の活性化、ブランディングにもつながればと期待しています。もちろん、附属高校ですので、グローバル戦略が本格的に始動する名城大学との連携がさらに強化され、ともに上昇できればと思っています。
「SSHの実績は大きな財産」と語る羽石教諭
羽石 優子(はねいし?ゆうこ)
大阪府出身。龍谷大学社会学部卒。立命館大学大学院社会学研究科修士課程修了。1998年から名城大学附属高校教諭。2003年から普通科に国際クラス(各学年1クラス)開設と同時に担当。12期生が入学した2014 年4月からは教育開発部副部長も兼務。担当教員たちとスクラムを組みながらSGHプログラムを推進中。