育て達人第118回 渡辺 孝一
研究実験棟Ⅱコートで「橋づくりコンペ」 19校参加のホスト校として優勝めざす
理工学部社会基盤デザイン工学科 渡辺 孝一 准教授 (鋼構造学)
学生たちが鋼製橋梁の設計?製作と架設技術を競い合う「ジャパンスチールブリッジコンペティション(JSBC)2013」が8月31日~9月1日、天白キャンパス研究実験棟Ⅱのメカニカルコートで開かれます。高専チームから大学院チームまで19校から学生約160人が参加する大会にゼミ生10人を率いて参戦する理工学部の渡辺孝一准教授に聞きました。
――「橋づくりコンペ」は今年で第4回。重量感はありそうですが、同じ理工系学生たちのロボコンや鳥人間コンテストに比べ、まだあまり知られていませんね。
「高校生たちもぜひ見に来てほしい」と橋づくりコンペをPRする渡辺准教授
「橋づくりコンペ」の正式名称は「ジャパンスチールブリッジコンペティション」(JSBC)。支間長(橋の長さ)は4mの模型ですが、その名の通り、鋼鉄で製作します。溶接したり鉄板に穴を開けたりして加工し、ボルトでつなぎ合わせながら、組み立て、完成させていく競技です。学生たちにモノづくりの楽しさを経験させながら、工学知識の応用力、問題解決能力、協調性を養うことを目的に、土木分野の鋼構造系大学教員たちが実行委員会を組織して2010年から始まりました。第1回を愛知工業大学、第2回を京都大学、第3回を東京都市大学で開催。ロボコンや鳥人間コンテストに比べ、日本ではまだあまり知られていませんが、米国で20年の歴史がある大会にならって課題や採点方法を決めています。
――参加校は19校。高専2校も加わり、学生160人と引率教員らを含めると200人超す参加者になりますね。
高専の参加は今回初で、長岡高専と熊本高専が参加します。高専は地方によっては地元の大学との連携が強く、実践的な勉強をしています。ロボコンでも高専は頑張っていますし、学生たちは、「負けたらまずいな」と脅威を感じているかも知れません。名城大は社会基盤デザイン工学科(4月から建設システム工学科を改称)の私のゼミと、環境創造学科准教授の小塩達也先生のゼミが1年おきに交代で出場しています。今回は小塩先生が海外留学中のため、私のゼミ生たちが2年連続出場します。授業が終わる夕方から夜10時過ぎまで、院生2人を含む10人のゼミ生たちが準備に追われています。
――橋を造る実技のほかにプレゼン、荷重審査もありますね。
午前中に架設作業を終え、昼食をとりながら、各校がいろんなスタイルで持ち時間5分のプレゼンをします。各大学の、この道の権威の先生方を始め、後援していただいている社団法人の日本鉄鋼連盟や日本橋梁建設協会からお見えのプロの方々も審査員に加わり、厳しい視点で、突っ込んだ質問が行われます。学生がへこんでしまうような突っ込みもあり、学生たちにはまさに試練の時間となります。プレゼンが終わると、組み立てられた橋に載せた重しを順に300kgまで増やしていく荷重審査をします。汗と苦労の結晶が、目の前で無残につぶれていくシーンと向き合うことになる学生たちも出てきます。
――名城大学チームの目標順位を教えてください。
もちろん優勝です。これまでの最高順位は第1回の9位。京都大学での第2回のように台風で競技が中止になった大会もありますが、開催校の面目もありますから、ぜひ、上位の成績を残してほしいですね。国立の有名校と肩を並べて競技することにプレッシャーを感じている学生もいるかも知れませんが、競技を終えた時は、“やっていることは同じなんだ”と、自信と新しい価値観が得られると思います。
――全国から集まる参加者には完成した研究実験棟Ⅱや大型実験装置をアピールするチャンスでもありますね。
そうです。大都市の中心部に近い大学で、これだけ立派な施設がそろっている大学は全国でも珍しいと思います。名古屋市内にある私立大学にもこんなにすごい施設があるんだということが、口コミで広がればいいなと思っています。大会では一般の方や高校生たちも自由に見てもらえるよう工夫します。運営スタッフは若い教員や大学院生が中心なので、競技の様子は、インターネットで動画中継もする予定です。このコンペの醍醐味は、広々とした舞台で汗をかいて作業に集中すること。ただ、雨で屋内ホールでの競技になるといろんな制限が出てきます。大学施設部からは「扱う鋼鉄部材で施設を傷つけないように」とクギを刺されていますので、やむを得ないことですが。その意味で、大会運営の最大の敵は雨ですね。
――OBでもある立場から後輩である名城大学生たちへ一言お願いします。
どんどん研究室に出入りして、実験室の機材や道具を使いこなしてほしいですね。高い授業料も払っているわけですから。無謀と思われてもいいくらい、積極性を発揮してほしいと思います。よく遊び、よく学べではないですが、目的もなく、丸一日スマホいじりではもったいないですよ。
「橋づくりコンペ」に挑む渡辺ゼミの学生たちと
渡辺 孝一(わたなべ?こういち)
岐阜県出身。名城大学理工学部土木工学科卒、名古屋大学大学院工学研究科土木工学専攻博士前期課程修了。博士(工学、名城大学)。大手鋼橋メーカー勤務を経て2003年、名城大学理工学部助手。助教授を経て現職。学術論文に「繰り返し水平荷重を受ける鋼製剛結トラスの破壊実験と解析」(共著)など。