育て達人第033回 海道 清信
自分の将来テーマ決めよう 現場には学びの材料があふれている
都市情報学部 海道 清信 教授(都市計画論)
都市情報学部の海道清信教授は昨年9月からの後期授業で、3年生を対象にしたゼミを美濃加茂市の市街地商店街で半年間開きました。同市のブラジル人など外国籍市民は人口の約1割。外国人集客もセールスポイントにして、商店街の活性化策を探るのが狙いです。
――美濃加茂市での現地体験ゼミを開催した狙いをもう少し詳しく教えて下さい。
「何を学ぶか自分のテーマを早く見つけることが大切」と語る海道教授
日本人と外国人がスクラムを組んだ、いわゆる多文化共生による市街地活性化対策について学ぶことです。美濃加茂市は日系ブラジル人を中心とした約6000人の外国人が暮らしています。人口のほぼ1割を占める比率は全国の自治体でもトップクラスです。日本はこれから人口減少時代を迎えます。労働力として入ってもらう外国の人たちとどう共存していくのかが大きな課題です。一方では市街地の商店街ではシャッターを下ろす店舗が目立っています。現状をしっかりと調査したうえで、どうしたら、日本人も外国人も集まる商店街に再生していくのかが課題です。現地ゼミには3年生8人と、卒論テーマに取り上げた4年生1人の計9人が、週1回参加しました。教室となったのは、JR美濃太田駅南側の商店街にある空き店舗を活用したスペースです。
――学生や市民の反応はどうでしたか。
次第に盛り上がりました。商店主らへのアンケート調査や、雪の舞う師走に街頭での市民アンケートも行いました。行政の仕事について教えていただいた市役所の人と仲良くなって、公務員試験対策でのアドバイスを求めていた学生もいました。現場にこそ学問のシーズ(種)があるというのが私の考えです。講義室での授業では得られない効果があったと思います。2月に行われた中心市街地活性化の講演会では学生たちが調査結果を発表しました。地元の人たちの関心は予想以上に高く、あと2年は継続したいと思います。市内には中山道の太田宿跡もあり、NPOによるまちづくりの活動が活発です。こうした活動との連携も期待できそうです。
――どういう方針で授業をしていますか。
私は大学教員になる前の20年間、地域振興整備公団というところで、地方都市に大規模なニュータウンや工業団地をつくるなどの仕事をしてきました。現場から学ばせることが大事だと思うのは、こうした体験があるからかも知れません。試験のための勉強というのは一過性のものです。現場で発見した課題に対し、興味を持って調べることはとても大切だと思います。私は教師の役割は、学生の学びを支援する応援団だとも思っています。私自身、高校生時代は応援団の副団長でした。スポーツでもコーチがいくら言っても選手が頑張らなければどうしようもありません。大学の授業でも主役はあくまで学生です。
――都市情報学部で学ぶことで「まちづくりの達人」になることはできますか。
まちづくりには幅広い専門知識も必要ですし、経験も必要です。都市情報学部で学んだからと言って、簡単に達人になれるわけではありません。しかし、まちづくりを進める上で、どこに問題があるのか、どうすればいいのかを考え、達人になるスタート地点立てる素晴らしい学部だと思います。学ぶメニューもたくさんあり、幅広い学びにも対応できます。ぜひ意欲的にチャレンジしてほしいと思います。
――学生たちが有意義な学生生活を送るためのアドバイスをお願いします。
少しでも早く、自分が何を目指して学ぶのか、そのテーマを見つけるのが一番大事だと思います。私は大学での研究生活を始めて、都市づくりの考え方で、「コンパクトシティー」というテーマに出会いました。日本の都市の多くは、都心部に高層の建物と、老朽化した木造住宅が密集した地区が混在しています。市街地の無秩序な拡大は都市を取り巻く農地や緑地の消失にもつながります。都心部を有効に活用することで都市全体がコンパクトにでき、近郊の緑地や農家も保全できます。公共交通を便利にして都心居住を進めることで、中心市街地の活性化も期待できます。自分のテーマを決めることはスタート地点に立つことでもありますが、幅広い勉強しないとなかなか見つかりません。人との出会い、地域活動とか様々な出会いの中で気付くこともあります。たくさんの本を読むことも大事です。アルバイトに精を出している学生の皆さんも多いようですが、本気になってテーマを見つけようとしたら、アルバイトをする時間も惜しいことを実感すると思います。
海道 清信(かいどう?きよのぶ)
石川県金沢市出身。京都大学工学部建築学科卒、同大大学院工学研究科博士課程修了。工学博士。地域振興整備公団勤務を経て1995年、名城大学都市情報学部開設に伴い助教授に就任。2002年から教授。専門は都市計画、まちづくり論。61歳。