育て達人第024回 中根 敏晴

暗雲立ち込める就職戦線   キャリアセンターに足を運んでほしい

キャリアセンター長 経営学部 中根 敏晴 教授

 世界的な金融危機、企業の急激な業績悪化で、就職戦線に暗雲が立ち込めています。世間からは「就職に強い大学」という評価が高い本学ですが、キャリアセンター長の中根敏晴経営学部教授は、「学生たちはもっと危機意識を持たなければ」と訴えています。

――「超売り手市場」とも言われた就職戦線ですが、金融危機の影響の広がりで、業績悪化を理由に、2009年春に就職するはずだった大学4年生の内定を取り消す企業も出てきています。「元気な名古屋」と言われるこの地方でも影響は出ているのでしょうか。

「キャリアセンターにどんどん足を運んでほ しい」と語る中根センター長

「キャリアセンターにどんどん足を運んでほ しい」と語る中根センター長

 もちろんです。4年生に対する8月以降の求人数は例年の半分に減りました。内定取り消しのケースはまだありませんが、内定通知をもらっていた会社が民事再生法を申請して倒産状態に陥っているケースが出ています。トヨタですら大変な状態です。東海地区は自動車産業のすそ野が広い地域ですから、アメリカ発の金融危機が実体経済に及ぼす影響はこれからかなり出てくると思います。

――キャンパスには「就職 再び氷河期 内定取り消し続々」という大きな見出しが躍る新聞記事を拡大して紹介したキャリアセンターの看板が登場しました。

 学生たちに緊張感を持ってもらおうと掲示しました。就職活動では有利な追い風が続いていただけに、学生たちには厳しさの実感が持てないのかも知れませんが、すでに多くの有力大学でも、訪れる企業が大きく減るなど、企業の採用活動が慎重になっています。浮足立つ必要はありませんが、危機意識と緊張感をもってほしいと思います。

――06年度が99.2%、07年度が99.5%と続いてきた高い本学の就職決定率に黄信号が灯ったのは間違いなさそうですね。

 そうです。高い就職決定率といっても、大手企業に就職する学生ばかりではありません。財務諸表が公開されていない中小規模の会社に就職する学生たちもたくさんいます。学生たちに「この会社は大丈夫ですか」と質問されても、十分答えられないケースも出てくると思われます。ただ、大手企業の採用縮小をチャンスととらえ、積極的な採用活動に動いてくる中堅企業も出てくる可能性があります。そうした場合、いっそう重視されるのは学生の質の高さです。企業は長い不況で苦労してきた経験から、セールスポイントを有する優秀な学生を厳選する傾向を強めています。学生たちは、自分の「売り」は何か、胸を張って言える準備が必要です。

――キャリアセンターの就職支援活動の流れを教えて下さい。

 1年生や2年生には進路支援講座など集団?グループ指導、3、4年生には一人ひとりに担当者を決めての個別指導を行っています。学生とはメールや電話、はがきで連絡を取り合うなどしています。中部地区の私大では最大の学生数を誇る本学が、希望者をベースにした就職決定率で99%を超す高い数字を維持しているのは、職員の頑張りに負う、こうしたフォローがあるからだとも言えます。学生たちに、社会における将来の自分の立場や役割を、早い時期から考えてもらうキャリア教育がもっと必要だと思います。将来の自分がどんな方向で活躍するかが早期に定まれば、大学時代に何を学ぶべきかがより鮮明に見えてくるはずです。

――就職活動の早期化、早い内定の決定などで、学生たちの中には3年生段階で、単位をほとんど取り終えてしまう学生もたくさんいます。就職が決まった後の過ごし方が問われているのではないでしょうか。

 各学部で4年生の学生生活を捉え直す方法を模索しています。私の所属する経営学部では、大学院との連携を検討中です。例えば、就職の決まった優秀な4年生を大学院の科目等履修生として受け入れ学ばせたらどうかという案もその一つです。年功序列という日本の労働慣行が壊れ、昇進に向けてキャリア?アップをするためにUターンして大学院に入り直すというニーズが、近い将来必ず出て来るという予測の下で考えられるプランです。その時に、生かせる単位を暇になった4年生に取らせるということと、4年生にもきちんと勉強させるというものです。ただし、具体化するかどうかはこれからの検討に掛かっています。

――キャリアセンターとしての今後の課題をお聞かせ下さい。

 就職氷河期の再来を覚悟して、足腰の強いセンターづくりをしていくことが必要です。  これまで以上に、就職支援に力を注ぐとともに、資格取得や公務員試験を目指す学生たちへの支援にも一段と力を入れていきたいと思います。「エクステンション講座」の受講者からは、今年も難関の司法書士試験合格者が誕生しています。大学院生や留学生の就職支援にも力を入れていきたいと考えています。

――厳しくなりそうな就職活動に立ち向かう学生たちへの要望はありませんか。

 自分がどういうところで生きていくつもりなのか、方向性をできるだけ早く見つけることです。キャリアセンターに頻繁に顔を出してほしいと思います。入り口の前で立ち止まっている学生たちも多いように見受けられます。臆せずに中に入ってきて下さい。職員は親切に対応します。

中根 敏晴(なかね?としはる)

愛知県碧南市出身。神戸商科大学(現:兵庫県立大学)卒、同大大学院経営学研究科経営学専攻修士課程修了。経済学博士(東北大学)。長崎造船大学(現:長崎総合科学大学)講師を経て名城大学商学部講師、その後助教授、教授。商学部が経営学部,経済学部へ分離独立した時(2000年)の最後の商学部長。2007年4月よりキャリアセンター長併任。専門は原価計算論。

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