育て達人第014回 岡本 浩一
国際交流センターが満20歳 留学生30万人時代で新たに500人目標
国際交流センター長 岡本 浩一 薬学部教授
本学では海外44大学と交流協定を結び、留学生を受け入れています。今年5月1日現在の受け入れ留学生は329人と、目標だった300人を超えました。開設20年目を迎えた国際交流センターの岡本浩一センター長に、今後の課題を語っていただきました。
――名城大学の国際化を推進する拠点として国際交流センターが開設されたのは1988年。20年の節目を迎えた本学の国際交流の現状を教えて下さい。
10万人の留学生受け入れを目指していた政府は、新たに30万人という目標を掲げました。本学では世界の44大学と国際交流協定を結んでおり、今年度は329人の留学生を受け入れています。約1万6800人の在籍者の2%で、全国平約4.2%の半分以下です。中部地区では学生数が最大の本学の規模からすれば、ちょっと寂しいと言えます。それでも懸案だった300人の目標はクリアしましので、新たに500人の受け入れを目指しています。
――本学では中国人留学生が留学生の8割を超すなど、大半がアジアからの留学生です。在籍する学部にも偏りが目立ちます。
中国などアジアに協定校が多いこともありますが、受け入れ学部が経営、経済、法学部などに集中しています。こうした学部で学ぶことがキャリアアップにつながると考える留学生が多いこともあるのでしょう。ただ全体のバランスも考える必要がありますので、欧米圏からの受け入れも増やそうと検討しています。それには英語による講義の体制を整える必要もあります。
――薬学部ではアメリカの2大学との交流が活発です。
南カリフォルニア大、サンフォード大の2校と、学生の相互訪問を中心に交流しています。南カリフォルニア大からは毎年10月に2~4人が訪れています。訪れた学生が、本学の授業に加わりながら、アメリカの教育事情について語ったり、連携大学院を組んでいる藤田保健衛生大学や薬局などを訪れて、日本の医療や薬事の現場を体験するなどしています。かなり充実したプログラムです。本学の学生も毎年、南カリフォルア大学を訪問しており、今年も8月下旬に、大学院生3人、学部2、3年生6人が渡米し、2週間現地に滞在する予定です。サンフォード大学とも交換留学制度を設けており、毎年1月ごろ、学生が相互訪問しています。
――天白キャンパスでも多くの留学生が学んでいるわけでから、一般学生にとっても国際交流のチャンスが身近にありますね。
その通りです。タワー棟5階にある国際交流センターには交流のためのスペースもありますのでぜひ利用して下さい。学生がボランティアで取り組んでいる「スチューデントアシスタント」制度による活動も活発です。この制度は6年ほど前に始まりました。登録した一般学生が、留学生を学業や生活面などで支援する制度です。約60人が登録していますが、サポートしてもらえる留学生だけでなく、一般学生にとっても国際感覚を養うメリットがあり、素晴らしい制度です。
――名城大学では長期ビジョンの中で、総合化、高度化とともに国際化をキーワードに掲げています。本学の国際化の推進について、センターとしての課題をお聞かせ下さい。
交流の実績を、量的にも質的にも高めていかなければなりません。例えば学生が、交流協定を結んでいる大学に留学するためには、少なくとも英語で授業を受けて単位が取れる語学力が必要です。残念ながら、本学ではまだ、そうした十分な語学力をつけて学生を送り出せるシステムになっていません。
――留学生の卒業後のフォローはどうでしょうか。
本学に留学した学生が、学んだキャリアを生かし、日本での就職を希望した場合、しっかりした支援体制が必要です。そうしたサポート体制の充実とともに、留学経験のある卒業生同士のネットワーク化も大切になってくると思います。現状では、卒業後の留学生の動向が十分に把握できていません。これからは、留学生の中からも各界で活躍する「名城育ちの達人」がどんどん出てくると思います。そういう人たちの情報を財産として生かさない手はありません。
――夏休み中の語学研修など海外で留学体験する学生もいます。留学の成果を、より実りのあるものとする上で大切な点は何でしょう。
私にとっての初めての海外での国際交流体験は、学生時代にハワイで開かれた日米生物薬剤学シンポジウムへの出席でした。大学を出てからも外資系企業の研究所に勤務していて、研修のため半年間、米国で暮らしましたが、得るものが多い貴重な半年でした。大切なのは出会った人との交流です。相手の国を深く理解するには、まず、その国をつくっている人との交流を深めることが大事だと思います。
【写真】「留学生との交流のチャンスを生かそう」と語る岡本国際交流センター長
岡本 浩一(おかもと?ひろかず)
群馬県出身。京都大学薬学部卒。同大大学院薬学研究科博士課程修了。薬学博士。 茨城県つくば市の米国ファルマシア?アップジョン社筑波総合研究所勤務を経て名城大学薬学部助教授、教授。2007年4月から国際交流センター長。専門は製剤学。47歳。