育て達人第007回 福島 茂
アジア、世界に目を向ける学生に 10号館1階に交流スペース
名城大学アジア研究所 福島 茂 所長 (都市情報学部教授)
天白キャンパス10号館にある名城大学アジア研究所は今年で開設3年目。学内の様々な分野で取り組まれている名城発のアジア研究を支援しながらネットワーク化に取り組む同研究所の福島茂所長に、学生たちへのメッセージも含め語っていただきました。
――名城大学アジア研究所の特色を教えてください。
開設3年目のアジア研究所について語る福島所長
2006年4月にオープンした、本学内すべての学部や研究科の先生方に開放された研究所です。学内には様々な形でアジアにかかわる研究をしている先生方がいます。そうした研究者間のネットワーク化を図り、研究活動を活発化させるプラットホーム(支援機能)をめざしています。各学部代表による運営委員会で運営方針を決めています。研究助成、研究成果の公開、情報発信、国際学術交流などに力を入れています。
――助成している研究としてはどんなものがありますか。
継続も含めたプロジェクトとしては08年度は3件の企画型プロジェクト(統合失調症およびアルツハイマー病動物モデルの開発と東洋伝統薬の薬効効果、東アジアにおけるグリーンバイオテクノロジー研究教育拠点形成、アジア経済三極構造の実証的研究)と5件の公募型プロジェクトが採択されました。助成額は企画型が年間で上限300万円、応募型は100万円です。応募には所員登録が必要で、現在70人の先生方が登録しています。
――セミナーやシンポジウムも開いています。
昨年度は名誉所長でもある明石康?元国連事務次長を招いての懇話会、インド経済セミナー、東アジア共同体シンポジウムなどを開きました。11月には日本国際協力機構(JICA)中部と国際協力セミナーを主催し(名城大学校友会共催)、JICAの青年海外協力隊員としてアフリカ、中央アジア、中央アメリカに派遣された本学の理工、農、法学部の卒業生3人に体験を語っていただきましたが、130人近い学生たちが参加しました。
――海外に目を向ける学生が多いのは頼もしいですね。
国際協力セミナーでは、モノがあふれる日本を離れ、途上国の人たちと一緒に汗を流したOBたちの体験が紹介されました。「やりたいことがあったら、何でもいいから精一杯挑戦すべき」というメッセージは学生たちの心に響いたようです。「自分も海外協力隊に参加してみたい」という学生もいました。協力隊はアジアばかりが対象ではありませんが、ぜひ、世界に目を向ける学生になってほしいと思います。青年海外協力隊の隊員の経験のある名城大OBは100人近いそうです。参加が活発なのは総合大学としての強みでしょう。特に農学部など理系学部出身者は技術を持っており、協力しやすいのだと思います。
――5月29日には研究所研究員による「アジアセミナー」が開かれ、理工学部生の「アジア文化に対する関心」についてのアンケート結果が報告されました。興味や関心のある文化では圧倒的に多かったのが「食文化」でした。ご感想をお聞かせください。
報告した理工学部の齋藤茂先生の調査結果では、中華料理、インド料理、韓国料理など、学生にとっても身近な「食文化」に対する関心が強く現れたようです。その他にも「宗教思想文化」「民族?地域?時代文化」「文化遺産」などに興味を持つ学生も多くみられ、関心には広がりがあります。さらに深い異文化理解につながることを期待しています。
――5月には「あぶない野菜~グローバル化する食卓」をテーマに「アジアシアター」も開かれました。
学生や教職員を対象に、DVD映像でアジアに関する環境や生活について考えていただく企画です。小さなイベントですが年間で5回くらい開いています。環境や社会的に関心の高いテーマを取り上げ、少しでもアジアに目を向ける人たちを少しずつ増やしていきたいと思っています。
――研究所と学生とのかかわりについて教えてください。
10号館1階にある研究所には、交流スペースや専門ライブラリーもあり、アジア関係の本やDVDも見ることが出来ますので、ぜひ活用してください。アジアに興味のある学生の皆さんにもアルバイトとして協力をお願いしています。留学生、日本人学生を問わず希望者に登録していただき、学内で主催するセミナーなどを手伝ってもらっています。
――学生たちへのメッセージを。
名城大学の学生も東海3県出身者が圧倒的に多く、日本の製造業の中心ともいえる地元に就職する人が多い。アジアをはじめ、国際的な舞台で活躍する機会も出てくると思いますので、ぜひ学生時代からアジアをはじめ、世界に目を向けてほしい。アジア研究所もそうした学生たちをバックアップしていきたいと思っています。
福島 茂(ふくしま?しげる)
高知県出身。長岡技術科学大学卒。東京大学大学院工学研究科博士課程修了。博士(工学)。 専門は都市計画、住宅政策、地域開発。アジア研究所初代所長。今年度からは都市情報学部でアジア文化論も担当している。48歳。