080先端金属材料 (赤堀 俊和) 研究室学生×教員 誌上ディスカッションON-PAPER DISCUSSION電気、物理、機械の分野から「材料」についての理解を深める学生 原さん(以下学生) 「材料」という分野に興味を持ったのは、母の病気がきっかけでした。くも膜下出血で倒れ、手術を受けることになったのですが、金属アレルギーのためにステントと呼ばれる金属のチューブ状の器具を使用できなかったのです。幸いにも、別の材料で作られた器具が母に合うことが分かり、無事に手術を終えることができました。その際はじめて、人の体内に使用することを目的に開発された生体材料というものがあることを知り、学んでみたいと思いました。赤堀准教授(以下准教授) 本学科では「材料」を主軸に、物理(応用物理、電気、機械)といった幅広い分野の知識を学びます。なかでも生体材料は、手術で体内に移植する器具や歯のインプラント治療などに活用されており、日々研究が進んでいる領域。私の研究室では、主に、人の骨に近い弾性率を持つ新しいチタン材料の研究開発を行っています。失敗を通して未熟さを痛感し研究者としてさらに成長できた学生 私は「巨大ひずみを利用したチタン材料の力学的特性評価」をテーマに、強化したチタン材料の評価やチタン試料の作製に取り組んできました。研究は楽しく、やりがいを感じる日々でしたが、1週間も作業を中断せざるを得ない大きな失敗も経験しました。その時はさすがに落ち込んで…。リスク管理の甘さや計画性の大切さを痛感しました。准教授 研究は、テーマに対して計画、実験、解析および考察の繰り返しです。発表に向けて計画的に進めていくことも重要なことです。どんな経験もエンジニアとしての力量に比例していくもの。失敗も原くんの成長につながったと思いますよ。卒業研究で実感した、学びの醍醐味さらに広く深い視野で研究を続けたい学生 研究室では、常に学生に寄り添いながら指導してくださる先生の助言に救われました。加工機や評価装置など、充実した設備も本学科の魅力です。チタンに関する見分を深めるために、日本に2か所しかないチタンの精錬工程を見られる工場を視察させていただいたことも、自分の研究を後押しする経験になりました。准教授 「材料」とは、物質を集めた集合体に機能を付与したものです。つまり、材料がないと世の中にあるすべてのものが成り立ちません。電車や航空機も、もちろんそうです。材料は、あらゆるものの根幹を成すもの。それを探求することが、材料機能工学という学問の魅力だと思います。学生 今後も大学院で研究を継続し、自ら計画を立て研究を進めていく実践力や、結果に対する解析力や考察力を活かしていきたいです。材料研究はもちろんのこと、より高度な手法を取り入れたり、効率化を図るなど、より良い研究方法を模索することも課題にしていきたいと思っています。
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